登山で低体温症になったらどうなる? 遭難事故から学ぶ予防法。冬眠事例も?

登山
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低体温症による遭難事故

低体温症による事故としてよく知られているもののひとつは、2009年に北海道のトムラウシ山で起こった遭難事故です。時期は7月でガイドもいたものの、雨と強風の中強行した結果、低体温症による10人が死亡する事故となりました。

二つ目は2012年に北アルプスの白馬岳で起こった遭難事故です。5月でしたが天気の急変により6人が死亡。しかも全員が医療関係者だったといいます。

このように低体温症は慣れた人であっても知識があっても、死亡に至ってしまうのです。

人間も冬眠できる?

そんな中、低体温から蘇生した例があります。2006年に六甲山で滑落した男性が24日後に発見されました。体温は22度でした。人間は30度を下回ると生き返るのは難しいといわれています。しかしこの男性は遭難して3日目くらいに意識を失いましたが、飲食もしないまま生き延びることができました。謎が残りますが、当時の担当医は低体温症によって脳が冬眠状態になったのではと考えているようです。

冬眠した?

人間もクマのように冬眠ができるとしたら、治療の仕方も変わるかも…。非常に不思議な事故ですね。

低体温症とは

とはいえ冬眠説は特殊な例で他に同様のケースは見当たりません。低体温症について改めておさらいしておきます。低体温症の主な原因は3つあり、低温、風、濡れです。特に濡れた衣服は急激に熱を奪います。35度以下を低体温症といいます。自力で回復できる可能性があるのは34度までです。

体温症状の例
36度寒気を感じて震え出す
35度震えが最大になる周囲に無関心になる
34度意識障害が始まるよろめく眠るろれつが回らなくなる
32度以下震えが止まる意識がなくなる呼吸減少心肺停止

私の低体温症?経験

私も今思えば低体温症気味だったのではと思うことがあります。まだ何も分からないまま綿の服を着て大菩薩嶺に行ったときのことです。途中から豪雨となり雨と風で視界が悪いなか下山を続けていました。夏だというのに震えが止まりませんでした。何度か民家の屋根が見えたんです。やっと着いたと思ったら進んでも進んでも民家にたどり着かない。近づいて分かったのですが、それは赤く染まった木々でした。一緒にいた友人はしっかりした人ですが、明らかな登山道以外の道を進もうと提案したりと、今思えば判断がおかしかったように思います。

低体温症を防ぐには

服装

まず肌着となるベースレイヤー(インナー)は速乾性のあるものを選びます。綿は絶対にNG。化学繊維やメリノウールなどの素材を選びます。特にメリノウールは保温性もあり、汗冷えしにくいです。ユニクロのエアリズムでは汗が乾かず厳しかったです。私はベースレイヤーが何もよりも大事だと思います。ここはこだわったほうがいいです。

中間着となるミドルレイヤーを持っていきましょう。フリース、ソフトシェル、ダウンジャケット、インサレーションと呼ばれるものも、ミドルレイヤーの一種です。

一番外側に着るアウターレイヤーは、雨風を防ぐ役割を果たします。ゴアテックスなどの素材が有名です。透湿性に優れており、蒸れを外に逃がす機能を持っています。


エネルギーをこまめに補充することも重要です。飴やチョコレート、おにぎり、ナッツなどを携帯し、少しずつ食べるようにしたいところです。

雨風を避けられる場所に逃げ込みます。なければアルミシートやツェルトなどをかぶります。濡れている衣服は乾いているもの着替え、温かいのみものを飲みます。アルコールは体温を下げてしまうこともあるため、避けたほうがいいです。

天候が悪い日は無理をしないことが一番。夏でも防寒具やレインウェアを持ち歩き、いざというときに備えたいものです。

参照:山の病気とケガ(野口いづみ著)