熊野は黄泉の国といわれている場所。実は古事記にも登場します。黄泉の国と聞くと、死後の国をイメージするかもしれませんが、熊野は生まれ変わることのできる、「よみがえりの地」。だからリセットしたいときに私は熊野を思い出します。
熊野古道を歩くのは3度目。今回は中辺路の中で難所といわれた大雲取越、小雲取越を歩くことにしました。登山好きで遺産好きなら一度は訪れてほしい場所。熊野に惹かれてしまう文系登山者の私ですが、一人で行く勇気はなく…。大内征さんと熊野リボーンプロジェクトの一期生有志で行く計画にのっかって連れて行ってもらうことにしました。
参考:熊野リボーンプロジェクト
1日目、大雲取越
スタートは熊野那智大社から。薄暗い空に朱が映えます。
旅の1日目はあいにくの雨。那智をスタートしたときは小雨でしたが、全身雨具が必要なほどしっかり降り始めました。それなのに、雨がこんなに楽しい山歩きは初めて。
雨の熊野古道は苔が映えて、むしろ魅力が増していました。幻想的にさせる演出に、雨は一役買ってくれていたのです。
でも石畳はすべります。年月を重ねた石畳は表面が摩擦で削られ、つややかで苔をしたためています。美しさと引き換えに滑る滑る。
滑りやすい石畳に見とれ、苦戦しながら、淡々と、時には恐る恐る足を運びます。
ちなみに滑りやすい道は前の人と同じ場所に足を置き、大きく転倒しないよう端を歩くといいそうです。
さて、一日目のお宿は小口自然の家。廃校を利用した施設なのだそう。
ちなみに洗濯機、乾燥機も充実しているので旅の途中におすすめ
2日目、小雲取越
2日目は小雲取越。小和瀬の渡場からスタート。
1日目とうってかわって平坦な道も多く、歩きやすい。
小人のために用意されたかと思われる小さな椅子。
やがて熊野本宮大社へ到着。圧巻の景色に、足の疲れも吹き飛びます。
嘘です。階段だあって思ってました。
このあとは大斎原(おおゆのはら)へ。何度も水害により流されましたが、かつて熊野本宮大社があったといわれる場所です。
そしてようやく、大雲取越、小雲取越を歩き終えました。なぜこの道を歩きたかったのかというと、中辺路の難所といわれていた道を体感しておきたかったから。
そのうえ、熊野三山のうち、熊野那智大社と熊野本宮大社のふたつを巡ることができる贅沢な道なのです。
しかしまだまだ終わりません。登山としては少々物足りないくらい高低差の少ない小雲取越のあとには、大日越が待っています。
2日目、大日越
大日越は熊野本宮大社から湯の峰温泉を結ぶ道。このとどめがいいのだと、うれしそうにガイドをしてくれた大内征さんは笑います。
夕暮れの気配に追われながら、山道を急ぎ歩きます。そして到着。
湯の峰温泉のほのかな硫黄のにおいに囲まれたときの多幸感といったら。
熊野古道ビールをおともに、温泉卵をいただきます。
目的地に着いたとき、なんとも寂しい気持ちにおそわれました。
もっと熊野古道を歩き続けたい。そしてもっと多くの人に歩いてほしい。でもこの道を知られたくない。そんな複雑な気持ち。
登山と世界遺産。その両方を時間をかけて自分の足と目でじっくりと味わえるのは、他にないと思います。飽きのこない、でも内省しやすい道が印象的でした。
またリセットするために、私はここに来るんだろうなぁと来年の自分に思いを馳せるのです。
お食事もおいしく温泉もすばらしい最高のお宿