登山の一番の危険は、遭難する可能性があることです。自然を相手にしているので、どれだけ事前に対策をしていても、体を鍛えていても、初心者向けの山でも遭難することはありえます。
世界一の登山者数として有名な高尾山ですら、滑落や死者が出た事故もあるのです。そこで、山で遭難を防ぐために何ができるのか、万一遭難しそうになったらどうすべきか考えてみました。
山での遭難
まず最初に、警察庁による「平成30年における山岳遭難の概況」から登山の遭難発生状況を確認してみたいと思います。
平成30年(2018年)の遭難者数は、3,129人。そのうち、死者・行方不明者は342人でした。登山による遭難者数は平成28年以降、増加傾向にあります。
ではなぜ遭難してしまうのでしょうか。その原因は、「道迷い」(37.9%)が最も多く、次いで「滑落」(17.4%)、「転倒」(15.0%)となっています。
平成30年態様別登山遭難者
遭難理由 | 人数 | 構成比 |
道迷い | 1,187人 | 37.9% |
滑落 | 544人 | 17.4% |
転倒 | 468人 | 15.0% |
病気 | 276人 | 8.8% |
疲労 | 237人 | 7.6% |
その他 | 417人 | 13.3% |
遭難者は60代、70代がそれぞれ22%と多い傾向にありますが、若年、中年層も少ないわけではありません。39歳以下でも21%が遭難しているのです。
出典:山岳遭難の概況(警視庁)
ちなみに私は下山したかったルートと異なるルートで下りてしまったことや、豪雨で視界が悪く危うかったことはあります。
事前にできる対策
そこで事前にできる対策をまずは考えてみました。ここからは「山のエマージェンシー」(山と渓谷社)も参考にしています。
自分の体力・技術を把握して行く山を決める
一番重要なのは、無理をしないことです。自分の体力、技術を把握し、攻めても102%くらいを限度に挑む姿勢が必要です。私は体力を超える山に行ってから気をつけています。無理をしないことが一番大切です。きついと思ったら途中で引き返す勇気も大切です。
天気予報を確認しておく
天気予報を事前に確認し、地面の状態を想定して準備をしていきましょう。特に台風のあとは通行止めになる道もありますし、増水して川が渡れなくなることもあります。普段よりも歩きにくいため、コースタイムよりも時間がかかることを認識しておくとよさそうです。
事前にコースを確認しておく
事前に地図を確認し、迷いそうなポイントを押さえておきましょう。事前にシミュレーションし、地図に注意点を書き込むとよさそうです。万一のときに途中下山する道や、巻道も確認しておくと安心ですね。
頂上まで行って体力に不安があるときに、どの道が下りやすいか山小屋や茶屋の方に教えてもらうこともありました。
必ず地図(紙)を用意する
インターネットの情報のみで行くのは避けましょう。携帯電話のバッテリーが切れてしまったり、通信回線がなければリカバリが利きません。
登山計画書を提出する
登山計画書を提出しましょう。登山エリアに該当する都道府県警察本部地域課へ、入山7日前まで提出するのが望ましいようです。提出するポストが設置されていることもあります。身近な人にも渡すようにしましょう。
誰かに登山に行くことを知らせておく
YAMAP(アプリ)などのアプリを使えば、手軽に登山計画書を他人に知らせることもできます。勤務先の人にも、どこに行く予定か伝えておくと、万一出社できない状態になったときに役立つのではないでしょうか。
私の場合は、登山+温泉旅行のセットで行くことが多かったので、Googleドライブで工程表をつくり、家族にリンクを送ることがありました(途中で計画が変わったら書き換えます)。
ビジターセンターや山小屋で登山道の様子を確認する
倒木や落石で通行止めになっていることや、強風により迂回を勧められることがあります。
季節に応じた装備を用意する
街は暑くても、山の上は寒いことはよくあります。夏でも防寒着は忘れずに持っていきましょう。低体温症になると歩けなくなってしまいます。
モバイルバッテリーを用意する
特に宿泊の場合には、モバイルバッテリーを用意しましょう。電波の悪いところではバッテリーも早めに消耗するようです。もちろん電波もないところもあります。どこで電波が通じるのか、事前にわかれば情報を把握しておくと安心です。
ちなみに、以前使っていた、シャープx1は2泊3日で充電せずに行けるレベルでした。
単独登山は極力避ける
単独登山が好きな人もいると思います。自由にできることは魅力的ですが、万一のときには助かる可能性が低くなります。遭難への対策という意味では、極力単独登山は避けたほうがよさそうです。
食料、水、薬、怪我に備えた準備を行う
自分が元気でも、マメがつぶれて歩けなくなることもあります。準備が万全でも気圧の変化で頭痛に襲われることや、シャリバテで動けなくなることも。緊急時に備えた備品の準備をしましょう。
現在地を常に把握する
要所で地図を開き、ルート通りに進んでいるか現在地を確認する癖をつけましょう。
常に時刻を確認する
山は暗くなるのが早いです。ゆとりを持って進めるようにしましょう。引き返す時間を決めておくことも大切です。暗くなくても終バスが早いこともあります。
もし迷ったらどうする?
現在位置を確認する
まず、地図を開いて現在位置を確認します。
現在地が分かり、登山道にいる場合
現在位置が分かり、いま自分が登山道にいる場合は、間違えたところまで引き返します。
現在地は分かるが登山道から外れた場合
登山道にいない場合は、来た道を思い出せるなら、慎重に引き返します。
道迷いの対策は、今までの行動を振り返ることが基本です。周囲を観察し、地図と照らし合わせながら登っていくことの大切さが分かります。
現在地がまったく分からない場合
現在地がまったく分からないときは、以下のような選択肢が考えられます。
1)連絡手段があるなら山小屋やビジターセンターにアドバイスを求める
2)連絡手段はないが体力に余裕があるとき尾根を登って上を目指す
(山頂には登山道が通るので、戻ることができる。万一のときにヘリコプターから発見されやすいため)
3)その場にとどまる(ビバークする)
防寒具や食料があるなら、明るくなるまでその場にとどまるという手段もあります。
4)救助要請を行う
最終手段として、救助要請を行う方法があります。民間の救助隊に救出された場合は、救助費用がかかります。
参照:「山のエマージェンシー」(山と渓谷社)
実際に遭難したときの状況次第で、選ぶものは変わってくるでしょう。私もどれが正しいとは言えません。どういった選択肢かあるかは知っておきましょう。
いざというときのために、山岳保険に入っておく方法もあります。1日数百円で入れる保険もありますので、懸念がある登山のときには、お守り代わりに入っておいてもいいかもですね。
私は方向音痴ではありますが、心強い友人のおかげで今のところ生きてます。地図を頭に入れないと死ぬって思うと、案外人はできるものです。