登山を始めるときに一緒に行く人がいない、グループで行くことに煩わしさを感じる、いろんな理由から一人で山に登る、単独登山にあこがれる人は多いのではないでしょうか。一人で登山に行くメリットやリスク、初心者から一人で登山に行くための計画の立て方についてご紹介します。
登山に一人で行くメリット
グループやツアーで登山に行ってストレスを感じた人もいるのでは。せっかくの登山なのに、コミュニケーションや体力・価値観の問題でストレスを感じるなんてもったいないです。単独登山にチャレンジしてみると、メリットがたくさんあることに気付かされます。
気乗りしないとき止められる
頭痛がする、二日酔いでやばい、生理になってしまった、なんかやたらと眠いなど、気乗りしないこともあるのでは。一人で登山に行くなら、「やっぱりやめた」が自由にできます。日時も自由に変更できるのが単独登山の魅力です。
行きたいと思ったら行ける
なんかストレスたまってきた、今週山行きたい!と思うことありませんか。明日行こう、と思い立ったら山に行く計画を急に立てることができます。これが何よりも魅力です。
自分のペースで歩ける
複数人で登山に行くと、一緒に歩く人のペースが自分と違って早すぎてきつかったり、ちょっとゆっくりだなと思うことがあります。しかし、一人で登山に行けば、自分のペースを選ぶことができます。
休憩時間も思いのまま
めちゃめちゃ好きな景色と出合い、思わず足を止めてしまうことありませんか。写真を撮りたいところで立ち止まったり、絶景の見えるベンチでぼーっとしたり、自由に時間を使うことができます。
行先を変更できる
今日はやっぱりここまでにしよう、このお店でごはんが食べたいからこっちの道から下山しようなど、計画を変更することができるのも、魅力のひとつです。
登山で一人で行くリスク
単独登山は魅力的なことは分かりますが、押さえておきたいのが、登山で一人で行くことによるデメリットです。単独行は遭難時のリスクが高い、これに尽きると思います。
単独登山のほうが遭難時のリスクが高い
2019年(令和元年)のデータでは、遭難者のうち複数登山者では死者が6.2%ですが、単独登山では13.8%と増えています。複数登山者に比べて、単独登山者のほうが遭難したら助かりにくいことが分かります。
出典:令和元年における山岳遭難の概況(警察庁)
女性の場合はつきまとい問題が発生することも
女性で一人で登山に行く人も、時々見かけます。心配するあまり、やたらと声をかけてきたり、一緒に歩こうとする「つきまとい」が発生するケースもあるようです。まあ私はないですが…。
こうした事態を避けるためにも、準備を入念にして備えておくことが何よりも大切です。一人でも複数でも、とにかく準備をすること。一人の場合は他の人がカバーをしてくれない分、より念入りにすればいいのです。
一人で安全に登山に行くためのプランニング
一人で安全に登山に行くために、事前に準備しておきたいことがあります。
登山者が多い人気の山を選ぶ
初心者は日帰りで行ける人気の低山からスタートするのが一番おすすめです。
人気の低山の例を挙げると高尾山、筑波山、御岳山、鋸山、大山などはいかがでしょう。低山だけは登ってきていますが、いずれも女性の単独登山も見かける人の多い山です。世界一登山数の多い高尾山も、さまざまなルートがありますので、体力に応じて試してみて、慣れたらケーブルカーを使わずに登ってみるのがいいのではないでしょうか。
自分の体力、技術に応じて山を選べるのが、単独登山の魅力です。
天気予報を確認しておく
天気予報を事前に確認し、地面の状態を想定して準備をしていきましょう。特に台風のあとは通行止めになる道もありますし、増水して川が渡れなくなることもあります。普段よりも歩きにくいため、コースタイムよりも時間がかかることを認識しておくとよさそうです。
事前にコースや現地の情報を確認しておく
事前に最新の地図を確認し、迷いそうなポイントを押さえておきましょう。事前にシミュレーションし、地図に注意点を書き込むとよさそうです。万一のときに途中下山する道や、巻道も確認しておくと安心ですね。
ビジターセンターや山小屋で登山道の情報を集めるのも重要です。特に台風通過後などの災害の直後は、倒木や落石で通行止めになっており、コースを変えざるを得ないことも。ほかにも強風により迂回を勧められることや、残雪の状況、さらには見どころなどを教えてくれることもあります。
インターネットの情報のみで行くのは避けましょう。携帯電話のバッテリーが切れてしまったり、通信回線がなければリカバリが利きません。必ず紙を用意しておくことをおすすめします。
アクセス手段を調べる
意外とおろそかにしがちなのが、登山道に入るまでのルート。高速バスを降りた後の乗り換えの路線バスが分からない、登山口にたどり着くまでのルートが分からないことがあります。登山コースの確認だけでなく、登山口に予定時刻までにたどり着けるよう、それまでの道順も確認しておきましょう。
特に路線バスは最終便が15時台であったり、本数が非常に少ないこともあります。計画通りなら何時のバスに乗るのか、最悪の場合は何時までにたどりつかないといけないのか確認しておくと安心です。
登山計画書を提出する
登山計画書を提出しましょう。登山エリアに該当する都道府県警察本部地域課へ、入山7日前まで提出するのが望ましいようです。提出するポストが設置されていることもあります。身近な人にも渡すようにしましょう。計画書はインターネットで提出することも可能です。
誰かに登山に行くことを知らせておく
YAMAP(アプリ)などのアプリを使えば、手軽に登山計画書を他人に知らせることもできます。勤務先の人にも、どこに行く予定か伝えておくと、万一出社できない状態になったときに役立つのではないでしょうか。
私の場合は、登山+温泉旅行のセットで行くことが多かったので、Googleドライブで工程表をつくり、家族にリンクを送ることがありました(途中で計画が変わったら書き換えます)。
装備計画を決める
行く山を決めたら、必要な基本装備を用意します。全装備をリスト化しておくのがおすすめです。単独登山は忘れ物が致命傷になります。誰かに借りることもできませんし、分担して持っていくこともできません。特に怪我や病気のためのエマージェンシーグッズはお忘れなく。荷物は増えてしまいますが、迷ったら持っていくのを基本にするのがよさそうです。
参考:装備・持ち物リスト
食料計画を決める
登山に必要なカロリーは条件にもよりますが、下記の式で算出できます。
運動強度(6.5メッツ)×行動時間×体重(kg)
※出典 「健康づくりのための身体活動基準 2013」
この計算式を使った場合、仮に体重60kgの人が、4.1kg以下の荷物を持ち、5時間行動したとすれば、消費カロリーは1,950kcalとなります。
6.5メッツ×5時間×60kg=1,950kcal
18歳から29歳女性が1日に必要なカロリーがちょうど1,950kcalですので、1回の登山でほぼ1日分のカロリーを消費することもよくあります。山小屋や茶屋を利用するのが荷物を減らせるという意味でもおすすめです。初心者ならバーナーの火がつかない、等のトラブルに備えるためにも、お弁当を持って行くのもいいと思います。現地で調達する場合でも、万一のときに動けなくならないよう行動食は持っておいてください。
もし遭難したらどうする?
万一遭難してしまったときの手順をまとめてありますので、参考にしてみてください。
自由に行くかどうかを判断でき、自由な時間の使い方ができる単独登山はとても魅力的です。リスクもありますが、事前に準備をし、無理をしないことで減らすことは可能だと思います。
参考文献:「単独行のTIPS100」(山と渓谷社)、「山のエマージェンシー」(山と渓谷社)